ほっこりホラー日和

怖がり人間の日記。本や漫画のネタバレ感想が多めかもしれない。

溶かされる系ホラー「えじきしょんを呼んではいけない」(最東対地)

 

タイトルに妙に惹かれたので読んでみました!

 

 

 

以下あらすじ。(引用)

「アレを最初に呼ぼうと言い出したのは―」バイト仲間とある島に旅行に行った住谷秋乃は、フリーライターの京本陽介に旅先での恐怖体験を語り始めた。“えじきしょん”―島の住人がそう呼ぶ、人を溶かしにやってくるという恐ろしい怪物の伝承。溶かされた猫の死骸を島で目にしていた秋乃たちは、宿の主人から聞いたその話に興味を持ち、音声検索で調べてみる。すると、スマホの音声は答えた。「えじきしょんを呼び出しました」
 

 

表紙に描かれているようなガスマスクの怪物”えじきしょん”が人を溶かしにやってくる話です。

ある島に伝わる伝承の怪物、でガスマスク姿というのは斬新ですね。

 

この物語は主人公「秋乃」が自身の恐怖の経験談フリーライターである「京本」に語るという形式で進みます。

突拍子もない話を語る秋乃に、京本は本当かよー?と疑いつつ話を聞いていきます。

そして最後は…。

 

えじきしょんから逃れられない恐怖はもちろん、登場人物の闇のほうが怖いなーと思える話でした。

ツッコミどころは多々ありましたが展開のスピード感もありどんどん読み進めちゃいました。

 

グロも特になしで文章も軽い感じなので読みやすいと思います。

夜一人になった時に思い出して怖い…という後を引きずる怖さもないです。

 

 

続きから、ネタバレ感想です。ツッコミどころについてなど。

 

 

個人的に怖いと思ったポイント

 呼んでしまったが最後、死ぬまでえじきしょんに付きまとわれる!

 

えじきしょんは一度呼ぶと以下の条件で現れます。

・待ち合わせをする。

・写真に撮られる。

・呼んでから30日以上経過する。

 

…もう無理じゃん。日常生活送るの無理じゃん。

どうあがいても条件通りになってしまう3つ目にも一応対策は用意されていて、それがワインを毎日1杯用意するというものなのですが、ねぇ。

そもそも待ち合わせをしないで日常生活を送るのは無理だし、外に出ればうっかり写真に写りこんでしまうこともあり得るし、真っ当な日常生活送るのは無理でしょうね。

 

そもそもあんなのがひょっこり現れるような生活、発狂しますよ。

倒しても増えるし。

最初にえじきしょんを呼びだしてから1人で抗い続けた横森店長は本当にすごいと思う。

 

 

 了児の変貌

 

 秋乃が片想いしていた了児は序盤こそ優しさだけが取り柄です!みたいな害も主体性もない優男なのですが、秋乃を守ろうと奔走するあたりから彼の狂った本性が見えてきます。

 

みんなの希望を優先しそれに尽くすという一見善良に見える彼の行動は、自己犠牲に酔いしれるためだったと。

特に秋乃を自宅に囲い世話をするようになってからは、自分の気分次第で殺すことも生かすこともできる存在を飼いならしているぞーという快楽があったんでしょうね。

ヤンデレ

 

 

悲劇の予感しかしない終わり方

 

上渕からえじきしょんの呪いを解除する言葉を教えてもらった秋乃ですが、えじきしょんを使役する側に回ってしまいます。

一度読んでしまったら溶かされるか、使役するかしかないってことですかね。

結末では語り部の京本が初めの犠牲者になるわけですが、この後秋乃はどんどん人を溶かしてしまうんだろうなぁ…と後味の悪さを感じました。

 

了児もですが、こういう力を得てしまったら暴走するもんなんでしょうね。

秋乃の場合はえじきしょんに襲われ続けてメンタルもやられているだろうしなぁ。

上渕の「1人助かれば10人死ぬ、2人助かれば100人死ぬ…」という言葉が重い。

 

 

 個人的にツッコミたいところ

 登場人物がみんな性格悪い

 

秋乃はそもそも人を見下しすぎ。かといって自分にも自信がなさそうで好きになれない人物像でした。

そもそもバイト仲間グループが全然仲良さそうじゃないんですよね。惰性で付き合ってます感がすごい。

他登場人物もキャラ立ちがしているのは良かったのですが、みんな好きになれなかったので溶かされても同情があまりできなかった。笑

比較的いい人と思ったのはお笑い芸人と横森店長くらいかな…。

 

特に横森店長の友人「上渕」はどうしようもなく性格が悪い。

解決策をじらすわ煽るわ…。本当に友人?

作品中で一番(物理的に)痛い目にあっている人なのですが、ざまあみろとしか思わなかったですね。

 

それと民宿のオーナーはなぜ秋乃や横森店長を殺そうとしたんでしょうか。謎。

 

なんにせよ登場人物にあまり感情移入はできませんでした。

 

 

えじきしょんの特性が変

 

「硫酸かけかけマン」というネーミングと「ぴったん」という言葉から妙なマスコット感がありますね。(ぴったん、にはちゃんと意味がありましたが)

 

あとなんか場面を想像するとシュールなんですよね。

・神社に祭られているえじきしょん

・アダルトコーナーから出てくるえじきしょん

・トイレに座っているえじきしょん

・7人出てくるえじきしょん

…うん、シュール。

 

発生条件も不思議なんですよね。

ワインを供えると出てこない、というのはフランス出身だからまぁ納得します。

待ち合わせや写真がダメなのはなんでなんでしょう?

それと物を移すとえじきしょんも移る、というのはもはやよく分からない。

 

結局、えじきしょんは処刑を行う存在というよりは処刑を実行するツールみたいなものなのですかね。

 

 

秋乃のその後

 

建設事務所の防犯カメラから余裕で犯人特定されて捕まる気がするのですが、どう逃げるんでしょう。

最後の悪あがき?それともえじきしょんを使って何か作戦がある?

 

 

 

…以上、ぽつぽつとツッコミを書いてみましたが、なんだかんだで面白かったです。

B級ホラー映画にしたら映えそうだなと思いました。