一風変わった現代版おとぎ話。「ストーリィ・テラー」(高橋葉介)
どこかつかみどころのない女主人公がルポライターとして様々なお話を聞く…といった短編集です。
怪しく色っぽいお話が多い印象です。
ストーリーは起承転結があまりなく、高橋葉介ワールド満開な絵と雰囲気を味わえるものとなっています。
高橋葉介先生の描く大人の女性が好きな人には問答無用でおすすめです!
試し読みをして世界観と絵に惹かれた方も是非。
以下、各話のネタバレ感想です。
赤ずきん
主人公の能力「他人の話に介入できる」ことを説明するような回です。
お話はまんま赤ずきんな感じですね。
ヘンゼルとグレーテル
こちらも元のお話に近い感じ。
最後に出てくる語り手の息子がオリジナルな展開ですね。
ラプンツェル
助けを呼ぶ美しい女性は、自分を捕食しようとする怪物だった!という黄金パターンの話でした。
確かにラプンツェルの行動ってゲームや漫画で助けようとしたら実は敵だった奴っぽさがある。笑
ハーメルンの笛吹き
ここから一気にエロい展開の話が多くなります。笑
局部の表現はさすがにないものの、なかなかダイナミックな描き方です。
でも絵柄の問題か、いやらしー感じはしない。
お話については、青年が悪魔だったかどうかは置いておいて「甘い言葉にそそのかされてホイホイ付いていくなよ!」という教えでしょうか。
自分をそそのかした男と同じような行動を起こしそうな息子を見るのって微妙な気持ちになりそうです…。
眠れる森の美女
眠れるのは女ではなく男。
母が息子に対して劣情を抱くという中々ドキドキする展開です。
しかもアニメに出てくるようなうら若き母というよりはしっかりとマダムなんですよね。
母親の罪悪感と欲望が語り手にあのような夢をみさせていたのでしょうね。
シンデレラ
シンデレラを思いっきり皮肉ったお話です。好き。
若さと美しさで偶然選ばられただけとも言えますもんね。
だって選んだ王子はそれまでのシンデレラの苦労や努力を知らないから。
見られていなくても努力は必ず報われる!とか引き寄せの法則とか言ってしまうとそれまでですが…。
若さと美しさが終わったら簡単に捨てられてしまう。
夏の庭、冬の庭
この話は名前も聞いたことありませんでした。
美女と野獣の原案?のようなお話のようですね。
冒頭の語り手がやっている人身売買のような仕事…実際にあるとは思いたくないほど酷い。娘を売るような親の元には産まれたくないものです。
語り手は因果応報なのか、美女に見せかけた野獣に取り込まれてしまいますが本人的には満足そうですね。
白雪姫
オチはついたけどお父さんがダメダメなので娘は苦労するだろうなぁ…。
長靴を履いた猫
アゲマン物語。
社長令嬢が嫌な女なので、ひどい目には合っていますがあまり同情できず。
…ハッピーエンド?
青ひげ
まさかの百合!
レズの友人に押され気味の主人公が新鮮です。いつも余裕たっぷりなのに。
このお話が一番ダークで色っぽいと思いました。
完全に病んでしまっている友人とそれを救えなかった主人公…。好き。
オオカミと7匹の子ヤギ
幼いころの辛い記憶をなくしたのが良いか悪いかは置いておいて、良い終わり方だと思いました。
主人公がストーリィテラーとして本領発揮するシーンがかっこいいですね。
漁師とおかみさん
こちらは語り手なし、主人公が主観の話です。
立場上あまりどんな性格か分からなかった主人公ですが、このお話では人間味たっぷりの良いキャラをみせてくれます。
ろくろくび
こちらは単独の短編ですね。ザ・怪談といった話。
近親相姦や同性愛など、結構ドキドキするお話が多かったですが世界観のせいか不快感やいやらしさは感じませんでした。
久しぶりに高橋葉介先生の漫画を読みましたがやっぱり好きだなー。